毎日新聞 2008年10月26日 地方版 [神奈川県]

 ◇大和の軍需工場で働いた台湾少年工・激動の人生

 ◇「神奈川の歴史でもある」−−31日まで横浜

 第二次大戦中に大和市などの軍需工場で働いていた台湾少年工の人生を追ったドキュメンタリー映画「緑の海平線」が25日、横浜市中区の「シネマ  ジャック&ベティ」で公開された。故郷を離れて軍用航空機の生産に従事した少年たち。その激動の人生を追い、神奈川と台湾の「隠れた歴史」をよみがえらせ る内容となっている。

 日本は大戦中、労働力不足を補うために植民地だった台湾の小中学校で海軍工員を募集。1943〜45年、約8000人の少年工が海を渡り、大和市 の小田急江ノ島線・鶴間−大和駅間にあった高座海軍工廠(しょう)など全国の軍需工場で働いた。高座では「雷電」などの軍用機を造っていたという。

 映画では、高齢者となった5人の元台湾少年工へのインタビューを中心に、歴史にほんろうされた人生を描いている。タイトルは、日本へ向かう船の上から次第に見えなくなっていく台湾島の姿を思い出した元少年工の証言から付けられた。

 撮影と資料調査は日本と台湾のほか、中国や米国でも行われ、06年に完成した。郭亮吟(かくりょうきん)監督の米大学院時代の同級生で、プロ デューサーを務めた慶応大学講師の藤田修平さん(35)は「日台の歴史と、そこに生きる人を描いた作品だが、神奈川の歴史でもある。ぜひ地元の人に見てほ しい」と話している。

 公開は31日まで。26日に監督や県内に住む元少年工らの舞台あいさつがある。問い合わせはシネマJ&B(045・243・9800)まで。【高橋直純】